資金繰りを管理するには 〜資金繰り表の作成方法〜

 資金繰りを管理するには、資金繰り表を作成することが肝要です。手間は掛かりますが、やり方は簡単です。「資金ショートに気が付いた時にはもう手遅れ」、という事態を避けるられますし、早く分かるほど余裕をもって、銀行融資の申込み等の対応をすることができます。

 

資金繰り表とは

 資金ショートを発生させないために、現金や預金の出入金を管理するための書類です。BSやPLにその機能はありません。資金繰り表は、過去の実績で作る「実績資金繰り表」と将来の出入金が分かる「予測資金繰り表」に分けられます。重要なのは、もちろん、「予測資金繰り表」です。管理の頻度は、毎日なのか、5・10日ごとなのか、毎週なのか、毎月なのかは、その会社の状況次第です。
 資金繰り表を作ることで、早い段階で将来の資金繰り状況が把握でき、経営に集中することができます。

 

資金繰り表作成のポイント

 資金繰り表には3つの「収支」が記載されます。
・経常収支:事業による売上金等の入金と、経費等による支払金による収支。
      融資の支払利息はここで計上。
・設備収支:設備投資による支出と、設備売却による収入の収支。
・財務収支:融資や役員等借入金の収入と、それらの返済による支出の収支。

 

 資金繰り表作成のポイントは、以下をご覧ください。
 資金繰り表作成のポイント

 

資金繰り表作成の注意点

・税金、社会保険料の支払い計上
 固定資産税、消費税、源泉所得税は毎月支払いではない企業が多いですが、忘れがちです。確定していない税額は予測金額を計上します。社会保険料や労働保険料に関しても、従業員数が変動すれば金額も変動しますので、人事計画に応じて計上します。

 

・期日一括型の借入返済
 短期融資の場合、返済期日に一括返済するものがあるので、注意が必要です。

 

・固定性預金の取扱い
 定期預金や積立定期預金などは、普段の資金繰りには使わないことを想定しているので、「固定性預金」として財務支出に計上します。したがって、定期預金を解約して普通預金に切替えた場合は、「固定性預金払出」として財務収入に計上し、資金繰り表の手元資金に加えます。

 

実績資金繰り表作成

 必要な資料は以下となります。これらを使い、「●資金繰り表作成のポイント」に倣って作成します。
・月次試算表
・現金出納帳
・預金出納帳または預金通帳
・手形帳(受取手形帳・支払手形帳)
・借入金返済明細

 

【注意点】
・借入金は、経常収入ではなく財務収入に計上します。借入金の返済については、元本返済は財務支出、支払利息は経常支出です。
・試算表を利用する場合、税別の場合は税込に直した上で計上します。
・月末預金残高に誤差があった場合でも、1〜2万円程度なら「その他経費・収入」などで帳尻合わせしてもよいでしょう。1円単位で把握する必要はないので、千円単位の作成で十分です。

 

予測資金繰り表作成

 「月次損益計画書」を作成し、それをベースに作成します。

 

【注意点】
・売上金入金のタイミングと仕入・経費の支払のタイミングに合わせる
・支払利息と元本返済の金額を記載
・借入の予定や設備購入、税金・社会保険料・未払金の支払など、損益計画にないもので発生する入出金を入れ込みます。
・年払いの保険料や再リース料などの計上もれにも注意

 

資金繰り表の3つの収支の関係

 「資金繰り表作成のポイント」で紹介したとおり、資金繰り表には「経常収支」、「設備収支」、「財務収支」の3つの収支があります。資金繰りに問題のないケースは以下のようになります。

 

 ・経常収支:プラス  → 本業の儲けで、収支がプラス
 ・設備収支:※    → 設備の購入・売却による ※通常は考慮にいれない
 ・財務収支:マイナス → 新たな借入をしない限り、元本返済でマイナスになる

 

 3つの合計収支:プラス →経常収支の範囲内で返済されるため、プラスになる。ただし、設備収支は一時的なものなので、通常は考慮に入れる必要はない。

 

資金繰り改善の7つの方法

1.売上金の回収を早くすること
 特に新規取引の場合、回収条件も考慮する。また、請求書に支払期日を記載していない場合、支払期日を明記することで期日までに支払われやすくなる。

 

2.支払を遅くすること
 新規取引の場合、支払条件も考慮する。既存取引先には無茶な要求をしすぎない。

 

3.在庫の削減
 在庫の持ちすぎは、倉庫代・人件費などコストになるので、適正在庫を目指す。帳簿上の管理だけでなく毎月の実地棚卸も行い在庫管理を徹底する。

 

4.借入をする
 手元資金が増えるので、資金繰りには効果的。銀行融資のほか、「少人数私募債」という社債の一種もある。

 

5.資産の流動化、現金化
 遊休資産は固定資産税や維持管理費もかかるので売却する。ただし、売却損が懸念される場合は、慎重に判断する。手放せない不動産などがある場合は、セールアンドリースバック(売却後、そのまま借りて使い続ける)も検討する。

 

6.増資
 経営者の出資比率は最低でも過半数、できれば2/3以上の議決権を確保できるようにする。

 

7.適切な節税
 利益を減らすと節税効果になるが、逆に財務内容が悪化し融資が受けずらくなるので、注意が必要。