銀行融資の審査に通るために 〜事業計画書〜
銀行融資に重要な2項目のうちの2番目、事業計画書についてまとめました。
なぜ融資申込の必要書類ではない「事業計画書」が重要なのか
融資の申込みがあった場合、銀行は行内での融資判断をするために稟議書が用いられます。この稟議書を作成するのは銀行の営業担当者です。営業担当者は、企業の社長と面談して聞き取った情報や、決算書・試算表の内容をベースに稟議書を作成しますが、社長の意図したことが漏れて正しく伝わっておらず、また、担当者の勘違いで作成されることもありえます。また、面談で語られなかった重要なことがあるかもしれません。
そこで、そうした抜け漏れがない正確な内容を、また、決算書や試算表から読み取れる過去に対して、過去の反省とそれを踏まえた改善策、未来への展望を自ら書き上げるのです。過去の赤字が特殊要因である場合は、それも伝えることができます。
事業計画書3点セット
・事業計画概要書
・5か年損益計算書
・資金繰り表
以上3点となります。これをA4サイズで10ページほどにして作成します。長々とした文章よりも、簡潔に要点をまとめましょう。社長が自分で作成しなくとも、計画書の内容は社長が把握しておく必要があります。銀行との面談の際に、辻褄が合わないなどは避けるべきだからです。
事業計画概要書
融資を申込む理由を書きます。その融資で何を行い、その効果でどのように売上・利益を確保するのか具体策を示します。そして、営業利益・経常利益・当期利益・キャッシュフローを数値で示します。
また、計画の最大ポイントを記載します。例えば、新商品開発がポイントでそれに伴う運転資金が資金使途なら、それについての数字とその根拠、具体策などをまとめます。
5か年損益計算書
融資を受けることで、今後5年間の損益がどのように推移していくか中期的な展望を示します。「売上計画」「経費計画」「人員計画」「研究開発計画」などを含めた、今後どのようにして利益を出すのかということを示します。
ポイントは、事業計画概要書との整合性を保ち、返済財源(「6つのポイント」の3参照)が出ていることを示すことです。
資金繰り表(具体的作成方法は後述)
「資金繰り表」とは現預金残高の推移を示すものです。
例えば、売掛金による売り上げが上がった場合、PL上では売り上げを計上しますが、資金繰り表では、その売掛金が実際に入金されるまではゼロのままです。また、融資の返済はPL上では計上されませんが、資金繰り表では財務支出として記載します。お金が出たのか入ったのか入出金ベースで作成されるので、具体的なお金の流れが分かるのです。
実際には、過去3か月程度の「実績資金繰り表」と将来9〜12か月程度の「予測資金繰り表」を組合せることが多いです。「予測資金繰り表」は、上記「5か年損益計算書」から導き出されます。
例えば、設備を導入したいが、手元資金で購入してしまうと現預金が減り、資金繰りが厳しくなるところ、融資を受けることでそれを回避でき、さらに設備投資で売り上げ確保に繋がり、現預金残高が増やすことができ、返済も問題なくできるというストーリーを具体的に数字で示します。つまり、「銀行融資審査の6つのポイント」の「1.必要資金」の根拠になりえるのです。
3点セットのほかに「取引金融機関一覧表」
現在の融資取引内容(借入日、当初実行額、金利、現残債、毎月返済日・返済額・支払利息額、保全状況(保証協会・担保・保証人など))を記載しますが、提出はケースバイケースです。提出する場合でも、上記取引内容のうち、融資に有利になる項目に限ることも一考です。
3点セットの柱−5か年損益計算書
これまで説明してきた3点セットのうち、5か年損益計算書が事業計画書の柱になります。これをベースに「資金繰り表」が作れますし、それらから「事業計画概要書」が作成できます。
まず、計画の方向性・目指すべき姿と将来ビジョンに沿った3〜5年の概算数値目標を確認します。これはイメージするだけでなく、そのイメージを書き留めておけば思考の整理にもなります。
次に、売上計画、仕入計画、人件費計画、経費計画を明確にし(その前に大まかにイメージすると作りやすい)、損益計画を作り込みます。
そして、売掛金の回収計画、買掛金の支払計画、資金調達計画、借入金返済計画、設備投資計画を確認し、1〜3年目は月次、4〜5年目は3年目をベースに年次の資金繰り計画を作り込みます。
最後に、できあがった計画書と、最初に書き留めた方向性・ビジョン等との整合性を確認し、数値計画に沿った内容に調整していきます。
ここまで、銀行融資の申込みから審査の流れを紹介しました。
●銀行取引から始めてみたい
●銀行融資を申込みたい
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